ヤマウルシ(山漆、学名: Toxicodendron trichocarpum)は、ウルシ科ウルシ属の落葉低木。山地などに生える。漆器の染料に用いられるが、樹液に触れると激しくかぶれる。和名は、栽培種のウルシに対するものである。
分布・生育地
中国、朝鮮半島、日本(北海道、本州、四国、九州)などに分布する。山地や低地に分布し、山野の明るい場所を好み、道端のヤブに幼木がよく生えることが多い。
特徴
落葉広葉樹の低木から小高木で、高さは2 - 8メートル (m) になる。ウルシよりも高さは低く、幹もはるかに細い。樹皮は灰褐色で、皮目が縦に浅く裂けて筋になる。一年枝は太く、短毛があり枝先には密生する。
葉は枝の先に集まって四方に広がる。葉は奇数羽状複葉で互生し、長さ5 - 12センチメートル (cm) 、小葉は4 - 8対つく。葉は輪生状についており下の葉ほど小さくなる。小葉は卵状楕円形で両面に短毛が密生する。成木の葉は円く全縁だが、幼木の葉にはしばしば大きな少数の鋸歯がある。葉柄や葉軸にも毛が生え赤色を帯びる(葉裏の毛は葉脈上にのみあるのが特徴)。秋には紅葉する。紅葉期は比較的早く、他の樹種がまだ緑色のうちから赤色に染まり始める。条件がよいと赤色に染まり、橙色や黄色になるものも多く見られる。
花期は5 - 6月。雌雄異株。葉の付け根から長さ15 - 25 cmの円錐花序を出して、黄緑色の花が集まってつく。
果実は直径5 - 6ミリメートル (mm) の扁桃状で、表面にかたい刺毛が密に生える。冬でも外果皮が落ちた白い果実が残る。
冬芽は裸芽で濃褐色の毛に覆われる。枝先の頂芽は幼い葉が円錐状に集まり、側芽は枝に互生する。葉痕は心形や三角形で大きく、維管束痕は形がさまざまで多数が並ぶ。
樹液、葉汁にウルシオールを含み、枝や葉に触れるとウルシかぶれの炎症を起こす。ヤマウルシのほか、同属のハゼノキ、ヤマハゼ、ヌルデなども触れるとかぶれを起こす。
利用
葉は染料になるが、皮膚に激しいかぶれを起こす。ウルシ同様に漆器の塗料として用いられる。 また、果実から蝋を産する。
近縁種
よく似ている樹種に中国産のウルシ(Toxicodendron vernicifluum)があり、ウルシの紅葉はヤマウルシよりも地味に染まる。また葉の形や枝ぶりが、山菜の「タラの芽」で知られるタラノキ(Aralia elata)と似ているが、ヤマウルシにはタラノキのようなトゲはない。
- ウルシ Toxicodendron vernicifluum
- ヤマハゼ Toxicodendron sylvestre
- ハゼノキ Toxicodendron succedaneum
脚注
参考文献
- 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文『樹皮と冬芽:四季を通じて樹木を観察する 431種』誠文堂新光社〈ネイチャーウォチングガイドブック〉、2014年10月10日、102頁。ISBN 978-4-416-61438-9。
- 辻井達一『続・日本の樹木』中央公論新社〈中公新書〉、2006年2月25日、114 - 117頁。ISBN 4-12-101834-6。
- 平野隆久監修 永岡書店編『樹木ガイドブック』永岡書店、1997年5月10日、249頁。ISBN 4-522-21557-6。
- 茂木透 写真、高橋秀男・勝山輝男 監修『樹に咲く花:離弁花 2』山と溪谷社〈山溪ハンディ図鑑 4〉、2000年10月、274-277頁。ISBN 4-635-07004-2。
- 金田初代、金田洋一郎(写真)『ひと目でわかる! おいしい「山菜・野草」の見分け方・食べ方』PHP研究所、2010年9月24日、186頁。ISBN 978-4-569-79145-6。
- 林将之『紅葉ハンドブック』文一総合出版、2008年9月2日、41頁。ISBN 978-4-8299-0187-8。
- 林将之『葉で見わける樹木 増補改訂版』小学館〈小学館のフィールド・ガイドシリーズ〉、2010年、249頁。ISBN 978-4-09-208023-2。
関連項目
- 木の一覧
- ツタウルシ
外部リンク
- "Toxicodendron trichocarpum". National Center for Biotechnology Information(NCBI) (英語). (英語)
- "Toxicodendron trichocarpum" - Encyclopedia of Life (英語)
- 波田善夫. “ヤマウルシ”. 植物雑学事典. 岡山理科大学. 2011年12月9日閲覧。




